サンタクロース。
それはどんなにがんばって
目を開けていようとしても
ふっと寝ちゃったすきに
やってきて
とっとと帰ってしまう
すばやい人だった。
太っていて
すばやく動かなさそうなのになあ。
トナカイソリがおうちの頭上に
パーキングしても
その気配すらわからかなった。
ルドルフの鼻は
かなり赤く光るようだから
気がついてもよさそうなのになあ。
結局、配達中のサンタには会えずじまい。
でも12月になると
なぜだか街角ではときどき見かけて
ケーキなんかを売っていたりする。
ほんとうに不思議だ。
いつのころからか
サンタは来なくなった。
引っ越したときに
北欧のほうまで
転居届けを出さなかったせいか?
それとも
おもちゃよりもっと
欲しいものが出てきたせいか?
ともかくも配達のエリアからは
はずされてしまってから
幾久しい。
だからわたしは
なかばあきらめの境地で
サンタのまねをすることにした。
もちろんあの衣装もトナカイゾリも
用意していないけど
こっそりとひっそりと
いいものを置いていく
そういうところをまねてみたのだ。
もしかしたら
いつもこそこそしていてる
サンタの精神状態が
わかるかもしれないと。
駅前のホームレスのおじさんの
荷物にこっそりとしのばせる千円札。
植物を大事に育てているおばあちゃんの
おうちの玄関に季節の花の鉢。
のんびり気持ちのいいカフェの
マガジンラックにいいことの書いてある本。
それから
もっと面白い方法があって
ATMという機械の前に立って
依頼主「サンタクロース」と打ちこみ
どこか遠くの孤児や動物たちに
送金なんてこともできたりする。
そうしてあるときわかったんだ。
サンタは
「楽しいからやっているんだ!」
ってことにね。
それはそれは大発見だった。
サンタはお仕事だなんて
思ってやしないんだよ。
ただ楽しくって
やめられないんだよ。
だから毎年師走の
超忙しい中。
道路も大渋滞の中。
キンキンに寒い空を
すっ飛ばしてやってくるんだってね。
アホだよねえ。
この寒さじゃあ
ルドルフもびっくりなくらいに
お鼻も赤くかじかんでしまうだろうにねえ。
ねえ、そこの君。
君ももしかしたら
サンタの精神状態を知りたいのかい?
だろうねえ。
だけど悪いことは言わないよ。
そんなことはもう
忘れておしまいなさい。
一度試したら
やめられなくなってしまうのだから。
夢中になって
戻れなくなってしまうのだから。
ねえ、そこの君。
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