その朝、思うところあって、身繕いの最後に手にした口紅を引かずにおいた。鏡の隣で、私の大好きなひとが、ネクタイの結び目を作っていた。
私は、ネクタイを締める男の手元が大好きだ。メカも扱う、器用な手である。あるべきものを、あるべきかたちに、さっさと整えていく男性脳の出先機関、「手」。
その、私の存在に関係なく機能する美しい手を見ていたら、なんだか理由もなく仕返しをしてあげたくなったのだ。 そこで、「キスをして」と、嫌がらせをしてみたのである。
彼は、一瞬怯んだが、ちゃんと我慢をしてくちづけをしてくれた。断る理由が見つからなかったのだ。口紅が付くから、という言い訳は利かないものね。
男性脳は、ワイシャツに手を通すあたりから、明らかにビジネス用の脳に変わる。ネクタイを結び終えたら、隣で眉を描いている中年のパートナーなんか、もう遥か彼方、異なる時空にあるのである。
黒川伊保子さんのエッセイ「紳士のくちびる」より
http://www.ihoko.com/f_essay.html
「そうそうそう」とうなずいてしまいそう。
最後はこんな風に結ばれる。
私は、最近気づいただけである。男性脳というのは、与えられた責務を遂行するために進化した脳なのだ。今夜の楽しさ、明日の嬉しさを自発的に思いつくようにはできていない。したがって、その演出を愛だと信じ込む女の機嫌をどうすることもできないのである。 だから、女は、男の気持ちを慮ってもしかたがないのだ。自分の機嫌の面倒を、自分で見るしかない。オトナの女と呼ばれてから二十年余り、やっと気づいた真実である。
「そうだそうだ」とまたわたしは笑ってしまう。
わたしの彼も今日こんなこと言っていたっけ。
男女の脳の違いをラジオで聞いたよ。
喧嘩したとき「どうしてこんなことするの」ってって女性が言うとき
男は「だからこれでこうで」って事情を説明しようとするけど
女性は感情の話をしているのだかから
「大丈夫?」などと言って気持ちを汲んで欲しいんだってね。
まったくそうです。
その通り。
男女の違いはこう!と
プロトタイプにすべてがはまる訳ではないのでしょうけれど
よくもまあ、こんなに違うもんだと
わたしは最近面白がっているの。
でもそれは最近のこと。
「そんなことするなんて、言うなんて、冷たい!ひどい!」
そうやって決めつけていましたっけ。
友人の惜しみないサポートや
同じようなことを繰り返し起こしてくれる天のはからいによって
違いを楽しめるようになれたんですもの。
ありがたいことです。
だからいまでは
「どうしてさっさと服を着ちゃうのよ?」
なーんて考えずにすんでいる。
睦ごと、のちにね(^_^)
そして自分と違う考え方をして
違うこと選択をする彼が
さらに愛おしくなってしまいます。
でもこれが不思議で
責めないようになると
なーんにも言わないのに
相手が変わっちゃうことも多々あるのでした。
わお!
さて
男性のみなさん
女性が「どうして・・・」と不満そうに言い出したら
理由を理路整然と説明する前に
抱きしめてキスのひとつでもしてあげてくださいな
PS 男性脳・女性脳を自在に使いこなすスーパーウーマン黒川伊保子さんのエッセイは
どれも面白いので上記リンクからぜひどうぞ。著書も多数です。
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